JIS Z 2384 大気腐食モニタリングセンサ 解説

1. JIS Z 2384 について

 2019年に制定された「大気腐食モニタリングセンサ」について解説します。
 この規格は,金属材料に対する大気環境の腐食性を評価するモニタリングセンサのうちACM(Atmospheric Corrosion Monitor)型腐食モニタリングセンサについ規定しています。

2. 用語及び定義 – 積層型ガルバニック対(センサ構成について)

 JISでは異種金属接触腐食を構成する2種類の金属材料(ガルバニック対)の間に絶縁層を介して,積層構造としたものと定義されています
 2種類の金属材料とはAg基板(Fe, Znなど)のことで,絶縁層はBNのことをいいます。
 Fig.1の下図はACMセンサA-A’の断面図で,絶縁層BNを介して 導電層のAgと基板が積層されていることがわかります。

Fig.1

3. センサ部について

 センサ部はFig.2の青の部分を指します。Fig.1の断面図のように1mm幅の基板と1mm幅の絶縁層が交互に並び,絶縁層の上には0.8mm幅の導電層(Ag)が配置されています。

Fig.2

4. 測定の原理について

 センサから出力される電流は基板金属の腐食速度と良い相関関係があります。Fe/Ag対ACMセンサの場合Feの腐食速度がわかることになります。このことは昔からよく知られていました。Fig.3は Tomashovが 50年以上前 に考案したACM型センサです。

Fig.3 Tomashovが考案したACM型センサ(1966)

5. 性能(1) -絶縁抵抗について

 JISではACMセンサの基板と導電層との間の絶縁抵抗は10.0 MΩ以上でなければならないと規定されています。
 抵抗値は無限大であることが理想ですが,ACMセンサが開発された30年前は高性能テスターが入手しにくいために,テスター性能の最大値10MΩが採用されたようです。現在は1GΩ以上を合格基準としています。

Fig.4 絶縁部

6. 性能(2) -出力電流について

 JISでは「ACMセンサ出力電流の値は試験溶液を滴下して 測定する 」と規定されています。 大気腐食モニタリングセンサなので本来ならば大気環境で評価するべきなのでしょうが, 大気での試験が難しいこともあって試験法を簡便化しています。
 より正確に評価するには海塩(海水でも,NaCl溶液でもない)をセンサ塗布して恒湿槽で試験します。

Fig.5 恒湿槽試験の一例

8. 材料(1) -Fe基板について

  基板に用いるFeは冷間圧延鋼板といわれるSPCCを使用します。いわゆる,Fe/Ag対ACMセンサと呼ばれる基板に使用されます。

9. 材料(2) -Zn基板について

 基板に用いるZnめっき鋼板は溶融亜鉛めっき鋼板で化成処理を施していないもの(種類の記号M)を使用します。センサなので表面処理されていると安定した出力になりません。Zn/Ag対ACMセンサの 基板として使用されます。

Fig.6 Znめっき化成処理なし記号

10. 材料(3) -絶縁ペーストについて

  絶縁ペーストは 窒化ほう素(BN) が主流です。Clイオン濃度が低く,熱電度率の良いものが使われます。

11. 材料(4) -導電ペーストについて

  導電ペーストはAgと規定されています。「性能(3) – 表面抵抗について」でも説明した通り, Agの抵抗はほぼ0Ωであることが求められます。

Fig.7 導電部(Ag)

12. 包装について

 JISはACMセンサを輸送するときの包装についても規定しています。
 腐食しにくい場所,例えば凖密閉空間や結露環境ではセンサの初期感度が求められます。 金属の表面は自然な状態で腐食を抑制する薄い酸化被膜が形成されるますが,このような環境で使用する場合は酸化被膜除去処理を行います。
 この時はセンサ輸送時にシリカゲルとともに真空封入します。